小林光代夫人の手紙
■小林光代夫人
小林光代夫人が葬儀に参列された方々に送られたお礼状を、ご本人の了解をいただいて掲載させていただきます。
拝啓
初夏の候となりましたが皆様にはお変わりなくお過ごしの事と存じ上げます
先般 夫 小林 収 葬儀の節はご多忙中の中御鄭重なるご弔問とご厚志を賜り誠にありがとうございました 又遅くなりましたが多くの方々からお心のこもった御弔電と御供花を頂きましてこの場でお礼を申し上げます 御蔭様にて 釈厚収 七七日の法要を龍善寺に於いて滞り無く相済ませました
この度の突然の訃報には驚かれた方も多いと存じます ずっと付き添っていた私でさえ通夜と葬儀の最中も現実を受け入れられず 只々間違った時間が悪戯に過ぎて行く 早く戻さなければと空しい思いにとらわれておりました
ふと気が付くと多方面から大勢の方々が主人の為に駆け付けて下さっていました
幼少より大学までの京都での学生時代 日本経済新聞社に入社して駆け出しの記者の大阪経済部時代 東京に移ってからの産業部 国際部時代 香港 ニューヨーク駐在時代 日経BP社 TV東京 TBS・・・ そして流通経済部の現在に至るまで出会ってお世話になった全ての方々に活かされて主人はここまでやってこられた事を思い知りました 男は日本の国を良くする為に働くんだ(そんな事書くなよと言う声が聞こえますが・・・)と学生時代に格好付けていっていた主人 時々今の仕事は為になっているのかなあと呟いていた主人 昨年末からの思いもせぬ闘病生活に果たせなかった皆様とのお約束とお詫びを これから徐々に返していこうとしていました
ご弔問下さった皆様一人一人にごあいさつをするたび主人との深い繋がりを感じ取り ああここに戻りたかったであろう夫の無念さを痛感いたしました 同時に誠に幸せな生涯であったとも納得いたしました
主人は冬に突然の病〔原発不明未分化癌リンパ節転移〕に倒れましたが三月になって奇跡的な回復を見せ春分の日に退院できました 近所の公園に散歩に出てゆっくりと自宅療養して次の治療に移ろうと言う矢先桜の花が散るとあっけなく逝ってしまいました。
「風をよむ」日経MJのコラムの題名ですが題名そのままに風のように逝ってしまいました 風が吹いた後は静かです 家に残した山積みの本は主の帰りを待ち続けている様子で今にも主人があの飄々とした笑顔で戸を開けてふらっと現れてきそうな気配です
知り合って三十年掛け替えの無い片割れを失った私の心には未だ冬の風が吹いていますが大学生になる史と絹の二人の娘達が主人の志を胸に成長してやがて今年四人で楽しんだお花見の宴の桜色が心に蘇る様私も頑張っていくつもりです どうかこれからも私達を御見守り下さり 折に触れご指導下さいます様によろしくお願いいたします
最後に収さんありがとう そして主人の人生に関わって下さった皆様に心から感謝申し上げます
なお本来ならばご厚志を頂きました方には返礼すべきところではございますが一部を主人が生前より寄付しておりました あしながおじさん基金 に納めさせていただきました 後は子供の育英資金として大切に使わせて頂く事にいたしました
重ねて御礼を申し上げます ありがとうございました 略儀ながら書中を以って謹んでご挨拶申し上げます
敬具
平成十四年五月二十一日
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