「MJ部長のコラム」(日経MJメールマガジンより)2001.11.14
■小林収
米大規模テロ事件の後、企業経営の分野で1つ変わったことがあります。グローバル・スタンダードとして世界を支配した米国流経営に対する揺り戻しです。これは行き過ぎの反動というよりも、潮目の変化かもしれません。直近の日経MJ(11月13日号)にも、象徴的な2つの例が出ています。
最初は、フロントページの「トイザらスが変わる」です。
トイザらスは日米通商摩擦のシンボル的な企業で、10年前の1号店開店のテープカットに来日したのは、当時「日本市場を金梃(かなてこ)でこじ開ける」と言っていた米ブッシュ大統領(パパ・ブッシュ)でした。そして実際、同社は効率を最優先した米国流の店舗展開、品揃え、仕入れ方法を武器に瞬く間に日本の玩具流通市場を席巻したのです。そのトイザらスが、売り場に顧客対応のサービススタッフを置き、陳列の仕方を日本的に変え、物流まできめ細かな配送へと舵を切ったのです。
第二は、藤原秀次郎しまむら社長とのトップインタビューです。
同社は2000年度に減益になって「神話に陰り」と言われたものの、わずか1年で体勢を立て直し、今年度は2ケタ増益の見通しです。日本の小売業の経営者としては、間違いなく3指に入る藤原さんが、個人別に大きく差をつける米国流の賃金体系に疑問を呈しています。実力主義を標榜しパートから店長への昇格も珍しくない同社ですが、「モノには程度がある。日本は農耕民族だから、極端に差をつけるのは国民的なコンセンサスが得られない」と言います。
合理主義経営はある所までは絶対に強いのですが、人間は理論だけでは動きません。
トイザらス、しまむらという勝ち組の事例は、米国流と日本流のベストミックスに解があることを示しているようです。
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