「成毛式実践マーケティング塾」前書き
■成毛眞
小林さんが担当された「成毛式実践マーケティング塾」の前書きを転載させてい ただきました。
僕が「師匠」とかってに呼ばせてもらっているひとりに、堀場製作所の掘場雅夫会長がいる。その堀場さんのモットーは「おもしろおかしく」。京都本社のエレベーターに日本語と英語で麗々しくプリントされているのには仰天した。この「おもしろおかしく」精神は高度経済時代の終焉とともに日本のビジネス界からは消え去ったように見える。
あの時代、土日もなく仕事をする日本人ビジネスマンを世界中が働き蜂と呼んだ。しかし、誰もが未来を信じ世界中で日本製品を売りまくることを楽しんだことは疑いようもない。家庭は犠牲にしたかもしれないが、熱中して仕事をしていたのだ。21世紀に入ったいま、仕事も家庭も「おもしろおかしく」が僕のモットーになった。
本書はマーケティング論のテキストではない。すぐに役立つハウツー書でもない。読者には商品やサービスをいかに「おもしろおかしく」売ることができるかを知ってほしいのだ。他人とちょっとだけ違うという天邪鬼な直観力が、何百時間をかけた市場調査や社内会議より有効であることを実証しているつもりだ。会議は「おもしろおかしく」ないのだ。
また、本書のいくつかのキーワードはそれ自体が重要なわけではない。キーワードは自分たちで作るべきことを提示したかった。広告代理店や調査会社などのプロが作る「今年のキーワード」でビジネスをしていては、差別化さえできない。
共同執筆者の日経MJ永野健二編集長、本書編集中に亡くなられた小林収流通経済部長、石鍋仁美記者との長時間にわたるディスカッションはこのキーワード作りの再訓練となった。永野、小林両氏とも「日経ビジネス」編集長の経験がある。ときに企業にとって非情とも思われる記事を掲載するのは経済雑誌の宿命だ。僕も多少の痛い思い出があった。今回、いわば昔年の攻撃側と守備側の両者がテーブルをはさんでの議論は、刺激的であり官能的ですらあった。もちろん「おもしろおかしく」あったのだ。
知的好奇心あふれる日経MJ編集部と共著で出版できることは望外の幸せである。本書で扱えなかった膨大なマーケティング情報の収集にあたっては、日経MJ紙を購読されることをお奨めしたい。また読者におかれては本書の制作経緯のように、MJ編集部に対して忌憚のない議論を持ちかけることを期待したい。わが国のマーケティング力を拡大するためにもさまざまな業界業種相互のとりくみが必要だと思われるからだ。メディアもその読者も責任を果たさなければならない。
本書を畏友にして好敵手であった故小林収氏に捧げる。真のジャーナリストであった。
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