「成毛式実践マーケティング塾」後書き
■永野健二(「日経MJ」編集長)
小林さんが担当された「成毛式実践マーケティング塾」の後書きを転載させていただきました。
この本の著者が『成毛眞と日経MJ』となっていることに、奇妙な感じをもった読者もいらっしゃるかもしれません。
『成毛眞のマーケッティング辻説法』は、昨年十月十六日から十一月月十三日まで週に一回、毎回一ページ近い紙面をさいて五回にわたって日経MJ紙上で連載されました。
昨年編集長に就任したわたしは、創刊三十周年をむかえた『日経流通新聞』を『日経MJ(マーケッティング・ジャーナル)』とあらため、あたらしい紙面づくりに悪戦苦闘していました。
とりわけ「マーケッティング」を紙面のなかにどう取り込んでいったらいいのか、というのが最大の懸案でした。
わたしは、二十一世紀の社会を、とりわけ市場やコミュニケーションを解きほぐすキーワードは「マーケッティング」だと確信しています。マーケッティングといっても、いわゆる広告代理店流の「マーケッティング」でも、経営コンサルタント流の「マーケッティング」でもだめなんだというのが、もうひとつの確信でした。
そんなとき、ふと頭をよぎったのが、九五年から九七年にかけて日経ビジネスの編集長時代の時代に、マイクロソフトの日本法人の社長としておつきあいのあった成毛眞氏の顔です。
わたしは、マイクロソフトという会社を世界最強のマーケッティング・カンパニーとおもっています。かってそれをビル・ゲイツとのインタビューでぶつけて、マイクロソフトを技術の会社だと言い切る、かれの不興を買ったこともありました。
そのマイクロソフト・ジャパンをひきいて、「ウィンドウズ」を日本市場で圧倒的な独占商品にまで高めた成毛氏の手腕は、まさに日本のMr・マーケッティングと呼ぶにふさわしい。さらにいいことには、成毛氏はすでにマイクロソフトを退社して自由の身です。
とにもかくにも成毛氏に頼み込んで実現したインタビューでした。
メンバーは成毛眞氏に、編集長の永野、そして日経MJ部長(流通経済部長)の小林収、そして石鍋・・記者、そしてカメラマンの矢後・の五人でした。
インタビューはその後、数回にわたりましたが、約四時間に及んだ第一回目のインタビューはまるでプロレスのバトルロイヤルか、ライブハウスのジャム・セッションのようなおもむきでした。
その内容は、なかなか刺激的で、インタビューのあとに、百戦錬磨のジャーナリストである小林収が「いやー充実した時間でしたね」というくらいでした。
「マーケッティング辻説法」というタイトルも「市場を小さくとらえよ」「小金持ちおじさん」「山手線マーケッティング」など、この本で使われているキーワードのいくつかもその時にきまりました。
それでも積み残した材料があまりにも多く、「本にしよう」となったわけです。
押しつけがましくいうなら、この本は、成毛眞と日経MJとの合作による日本の『マーケッティング社会』への自立宣言なのです。そんなおおげさなことをと言われるかたには『内山田洋とクール・ファブ』ののりと、いっておきましょう。
この“クール・ファイブ”のリード・ヴォーカルだった、小林収は、その後、闘病生活に入り四月三日に永眠しました。振り返ってみれば、このインタビューの頃に病魔と必死に闘っていたのかもしれません。
成毛さんは、いそがしい日程をさいて、通夜・葬儀にフルタイムで参列してくださったうえ、直接シアトルのマイクロソフト本社に連絡してビル・ゲイツの花輪を用意してくれました。
成毛さんにとって、亡くなった小林収にとって、そして日経MJのスタッフにとっても、この本は忘れがたいものになりました。
そんな感傷はともかくとして、日本のMr・マーケッティングともいえる成毛眞氏のあふれるようなセンスと才能を感じるこの本を、あらゆる経営者・ビジネスマンにお勧めしたいとおもいます。
2002年5月
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