小林収さんへの追悼メッセージ
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心優しく思いやりにあふれた大先輩
小林収編集長時代
小林収編集長インタビュー
書籍「こんな経営手法はいらない」
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小林編集長インタビュー
2000年06月〜08月

1999年 3月〜5月6月〜8月9月〜11月12月〜00年2月
2000年 3月〜5月6月〜8月9月〜11月12月〜01年2月

2000年6月5日号
花房 正義氏[日立クレジット社長]
 バブル崩壊にも負けず、外資にも負けず…いつも静かに笑っている。小生の脳裏にある日立クレジットと花房さんは、宮沢賢治の詩のイメージです。日本の金融機関が総敗退した1990年代、同社は堅実かつ合理的な経営で史上最高利益を更新し続けました。今も金融界屈指の優良企業です。
 「サービスの質に徹する」「わからないことはやらない」「モノづくりとともに歩む金融」「脇役として光る存在」といったモットーは一見地味ですが、花房さんの哲学に裏打ちされた重みがあります。インタビューをしていてふと、「手作りの経営」という言葉が浮かびました。


2000年6月12日号
ユルゲン・ドルマン氏[アベンティス会長]
 ドイツ・フランクフルトにあるヘキストの旧本社を訪れると、ロビーにギリシャの哲学者ヘラクレイトスの「万物は流転する」を象徴するモチーフが置いてありました。創業事業のスピンオフに続く隣国のライバルとの合併――アベンティスの誕生は、まさに万物流転を地でいっています。
 それを牽引したのがユルゲン・ドルマン会長です。ダイムラークライスラーのユルゲン・シュレンプ会長とともにドイツ企業の改革を引っ張る「2人のユルゲン」です。世界的に国境を超えた合従連衡が進む中、ドルマンさんの次の一手が米国に、そして日本にも伸びてきそうな感じがしました。


2000年6月19日号
佐々 淳行氏[評論家、元内閣安全保障室長]
 インタビューの最中、人名と数字がメモなしに機関銃のように出てきました。ちょっと際どい人物評もあったとはいえ、余程、頭の中が整理されているのでしょう。警察不祥事の根本を看破した上で、科学警察の強化、人事、組織改革、さらに増員と給与アップと打ち出す一連の改革策は、まさに的を射ています。近著『わが上司 後藤田正晴』でも書かれた名コンビで何とか実現に向かってほしいものです。
 インタビューした佐々さんの事務所は戦国武将佐々成政の子孫にして日本の危機管理問題の権威にしてはごく質素。そこに、公人としてのこの方のある種の自負を見た気がします。


2000年6月26日号
ジェームス・ケリー氏[UPS会長兼最高経営責任者(CEO)]
 eコマースの物流の主役と言えば、日本ではヤマト運輸ですが、世界ベースで見れば断然このUPSです。情報化投資のためにあえて100年近い禁を破って株式を公開、トリプルAの格付けと相まって資金力は万全になりました。今後は日本、アジアでも大攻勢をかけてくると思われます。
 日米の産業競争力で彼我の差が一番大きいのは、情報技術(IT)関連よりも、むしろサービス産業かもしれません。インタビューで名前を出した外食のマクドナルド、遊園地のディズニー、そしてこのUPS。徹底した情報化、システム化とヒトの上手な活用が、これら「強い会社」の共通項のようです。


2000年7月3日号
マンフレッド・シュナイダー氏[バイエル社長]
 ライン川の川辺、レバークーゼンにある広大なバイエルの敷地には3つの「本社ビル」がありました。現在の本社のすぐ横にあるのが、19世紀末に建てられた旧本社。重厚な建物に入ると、高い天井のロビーはユーゲントシュティル(アールヌーボー)風の調度で飾られ、壁は上3分の1近くが金箔でした。そして、その真向かいに21世紀へ向け新本社が建設中です。
 シュナイダーさんは生命科学全盛の化学品業界にあって「総合」へのこだわりを捨てません。時代に応じて「外観」は変えても「中心」は少しずつしか動かさない――。3つの本社は同社の経営哲学を象徴しているようです。


2000年7月10日号
有賀 馨氏[良品計画社長]
 セゾングループというのは不思議な集団です。グループ全体では西洋環境開発の破綻に代表されるようバブルに踊ったとしか言いようがないのですが、個々には時代を大きく先取りした企業を輩出しました。コンビニのファミリーマート、カード・信販のクレディセゾン、そして「無印良品」の良品計画が代表格でしょう。
 この3社に共通するのは、セゾンの先端的なイメージは維持しつつも、事業としては早々と“親離れ”を図ったことです。連結決算の時代にはグループの求心力が高まりがちですが、逆に遠心力を使うことで子会社をより強くする道もあると感じました。


2000年7月17日号
牛尾 治朗氏[経済同友会特別顧問、ウシオ電機会長]
 ITは技術。従って、効果を発揮するかどうかは、あくまでも使い手の能力次第。この単純な事実が、意外と日本では常識になっていません。組織が官僚的で情報公開の風土がないところでは、いくら最先端のコンピューターを導入し、光ファイバーを張り巡らしたところで、宝の持ち腐れです。
 ITの活用で米国が世界の先端を走るのは、牛尾さんが言うとおり、柔軟で個人中心の社会だからでしょう。日本はそれを踏まえてITを活用すべきなのですが、「米国は自らの姿に似せてITを作った」という牛尾発言を考えれば、とても日本はブームに浮かれている余裕はなさそうです。


2000年7月24日号
舩山 龍二氏[JTB(日本交通公社)社長]
 JTBに似た会社は海外ではどこか、と考えると答えが出てきません。世界で初めてパック旅行を開発した英トーマスクックも、米アメックスも、旅行会社から金融会社に変わってしまいました。「総合」旅行会社と呼べるのは、世界でもJTBぐらい。ネット時代の旅行会社経営のモデルは、自分自身で切り開かなければなりません。
 そこで、重要なのは株式公開でしょう。市場に日々さらされることで、経営の方向性をチェックできるからです。小生がお話しした米非公開5大企業について、舩山さんはメモしておられました。難しい側面もありますが、ぜひ、公開は実現してほしいものです。


2000年7月31日号
ジョン・チェンバース氏[シスコシステムズ社長兼最高経営責任者(CEO)]
 インタビューのため米サンノゼ市のシスコ本社を訪問して、実は道に迷ってしまいました。何しろ毎週のように新しい棟が建設されて、そのどれもが外見は似ているのです。本社社屋の形態自体に、脅威的な成長力と意外な平等主義が表れている気がします。
 チェンバースさんは苦労人のせいか、成功者にありがちな傲慢なところが微塵もないナイスガイでした。ワング時代には部下の再就職問題が一段落するまで自身の職探しを遅らせたため、100通もの履歴書を送るはめになったとか。ひょっとすると、米国のネット関連企業で一番「日本人受け」するトップかもしれません。


2000年8月7日号
村上 龍氏[作家]
 学生時代に『国富論』と『資本論』を意地で通読したことがあります。数学的簡潔さに憧れていた当時の小生には、両古典は雑多なテーマが詰まった「ごった煮」に見えました。しかし、実は、社会学や心理学も含めた、ごった煮性こそ経済の本質なのです。
 村上龍さんは小説という手法を使ってIT革命や金融ビッグバンの世界を鮮やかに描いていますが、凡百の学者の本より経済の実相に迫っています。戦後最初の「経済白書」を執筆した都留重人・一橋大学元学長は、「日本の経済学者のほとんどは経済学・学者」と看破しました。今も状況はあまり変わっていないのかもしれません。


2000年8月21日号
河合 隼雄氏[臨床心理学者、国際日本文化研究センター所長]
 前号の小説家(村上龍氏)に続いて今号も心理学者の河合隼雄さんと、経済人以外のインタビューが重なりました。別に経営者を避けているわけではありませんが、今の日本社会の直面する「病理」を解明するには、経済界以外も含めた知恵を結集することが何より大事だと考えているからです。
 河合さんを座長にまとめられた「21世紀日本の構想」も、この種の業際的な知恵の結晶でしょう。同構想については自民党も民主党も関心を示しているとのことですが、どこまで具体化できるのか。亡くなられてから急速に評価の高まった小渕さんの“遺産”を無駄にはしたくないものです。


2000年8月28日号
ジョセフ・T・ゴーマン氏[TRW会長]
 企業の戦略の中でM&A(企業の合併・買収)ほど難しいものはあまりありません。人材が流出したりブランド価値が低下するなど後遺症は付き物です。今年のダボスの世界経済フォーラムでもM&Aマネジメントがテーマの1つになりました。そこでパネラーの1人に選ばれたのがゴーマンさんです。ちなみにもう1人は、米シスコシステムズのチェンバース社長でした。
 完成車メーカーほど派手ではないですが、自動車部品での世界的な合従連衡劇は日本にも及んできています。日本勢はどこと組み、どこを買うか。英ルーカスの買収を成功させたTRWから学ぶべきことは多そうです。



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